東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)59号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二、原告は、本件審決は、引用例と本願発明との相違点につき判断を誤つた違法がある旨主張するが、この主張は、理由がないものといわざるをえない。すなわち、
原告は、まず、本件審決が、本願発明において、電動機の回転子が固定子を壼状に包む構造とし、その回転子をロールとしたことは、当業者が必要に応じて容易に考えられるものであるとしたことは、判断を誤つたものである旨主張する。しかしながら、「電動機において回転子が固定子を壼状に包む構造としたもの」および「外側回転型の電動機において、その外側を動力伝達用のプーリーとすること」が本願出願前周知であることは原告の自認するところであるから、これら周知技術の存在下において、ロールを電動機直結構造とすることに代えて、その回転子が固定子を壼状に包むようにし、回転子をロールとするようなことは、当業者の容易に考えうる程度のことであると認めるを相当とし、他にこれを左右するに足る証拠はない。したがつて、この点に関する本件審決の判断を誤りであるとする原告の前示主張は理由がないものといわざるをえない。
原告は、さらに、本件審決が「引用例の段付ロールはその表面は滑らかで硬いものである」としたことを誤りである旨主張する。しかして、引用例の特許公報には、その段付ロールの材質及びその表面の状態につき何らの限定的説明が見られず、したがつて、その機能からみても必ずしも滑らかで硬い表面を有するものに限らず、まして、それが鉄製であると断ずべき根拠のないことは原告の指摘するとおりであるが、右甲第二号証の記載から表面が滑らかで硬いものではありえないと断定することもできないことは原告の主張からも窺えるとおりである。換言すれば、引用例における段付ロールは、当業者がみれば、表面が滑らかで硬いものとそうでないものとの少くとも二種類のものを含むものと理解しうるものと認められるから、当業者がこの種ロールを使用する目的に応じて、本願発明におけるような、その表面が滑らかで、硬いものを選択することは、容易なこととみざるをえない(この選択を困難ならしめる事情は、本件においては、見当らない)。さらにその滑らかさ、硬さを高度のものとするかどうかに至つては、まさに程度の差にすぎないから、「非常に滑らかで硬いもの」という本願発明の構成要件は、結局、必要に応じて当業者が容易に考えうる程度のものであり、本願発明におけるロールの材質、表面の状態の点に発明があるものと認めることはできないとした本件審決は、その過程において、被告も自認するとおり、不適切な表現はあつたにしても、判断の趣旨において正当であり、もとより、これをもつて違法とするには足りないものといわざるをえない。
(むすび)
三、叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。(服部高顕 三宅正雄 石沢健)